青空と青い海、心おもむくまま

ご訪問ありがとうございます。このブログのきっかけは、もともと会社時代に社員の皆さんにお送りしていたレターでした。会社や人生の様々な悩みに対するヒントや、楽しく働くきっかけになればと書いていたものです。退職後も引き続き、日々の思いを書かせて頂いております。何か少しでも参考になれば幸いです。また、皆さんからご意見も頂ければ嬉しいので、よろしくお願い致します。

急がない力(2024/2号)

今月は「急がない力」というお題で愚考を述べさせて頂きます。

責任感の強い方ほど、業務を任せられると早はやと動いてしまいますが、結局は中途半端になりがちです。段取り八分といいます。急ぐべき時に立ち止まるのは勇気がいることですが、一旦自分の時間を預かってみましょう。焦ってしまえば、時機を逃す以前の問題となります。肝を据えて急がない力を発揮しましょう。

業務の段取り

どんな立場の方でも何らかの業務を任されたとき、たいていの方はその業務の段取りを気にします。どんな手はずになっているのか、そのための資材や機材の手配、準備はされているのか、なされていないのなら自分で必要な手順を考え、用意しなければならない。お一人の業務でもそうですから、複数以上で取り組む業務となればなおさら段取りが大事です。また、業務には必ず期限がありますから、逆算すれば一刻も早く段取りに掛からなければならない、という気持ちになります。特に、責任感の強い方にはその傾向が強いかもしれません。自分の指示を待っているであろう皆さんに迷惑をかけてもいけない、と考えてしまいます。また、積極的でアクティブな方も同じかもしれません。ウダウダと失敗ばかり考えて心配しているぐらいなら、まずは走り出そう、そして走りながら考えればいいじゃないか、となります。動かない自分に我慢でなくなり、動き出すことだけに満足する、という自己中な考えからきているのかもしれません。

急いては事を仕損じる

ただ、往々にしてそういう場合に失敗しやすいのが、半煮え状態の何となく思い浮かんだ段取りで、隠れたリスクを想定できていないことです。そうして突き進めば、最後には後戻りできない状態になり、結局はもう一度一からリスタートとなってしまい、期限に間に合わない、若しくは間に合っても大した成果にならない、という結末です。「急いては事を仕損じる」ってわかっているのだけど、なぜかやってしまうのですよね。・・・

段取り八分

土建業界の用語に「段取り八分」という言葉があります。一つの仕事をやり遂げるためには事前の段取りがとても重要で、その段取りがきっちりと出来上がれば、その時点で全体の八割が完成したのと同じ、というような意味です。そのためには、仕事が大きければ大きいほど、業者の皆さんは皆さんの目に触れないところで、事前の段取りのための各種の検討や計画を綿密にされます。その際大事なのは、隠れたリスクの発見とその対処策、突発事態における次善、次々善策の立案です。結局は、そんな計画は無駄になるかもしれませんが、そういった様々な検討がなされているからこそ、本番では怖いものはなく、結果的にスムーズに工事は進行するのです。ラッキーなポテンヒットはないのです。傍から見ていると、その間何にもしていないように見え、何で一日も早く工事に着手しないのかしら、とイラっとしてしまうぐらいです。

立ち止まる勇気

仕事の種類が異なれば、同じように時間をとってじっくりと検討する、ということはできないかもしれません。ただ、「急がなければいけない」という部分だけに目を向けてしまうと、前出のようになってしまいますから、一旦立ち止まるという勇気が必要になります。決めなければならない立場の方が、決める前に立ち止まるのはとても勇気がいります。ただ、「急がば回れ」と言います。あえて急がないということは、実はとてもすごい能力なのです。そのまま忘れてしまっては責任放棄となってしまいますが、一旦放っておくことで、そこにまた新しいアイデアが沸いてきます。ですから、勇気をもって放っておくことができるか否か、がとても重要なのです。

時機を逸するという心配

ただ、そうやって放っておくと、本来の時機を逃してしまうのではないか、と責任感のある方は焦ってしまいます。確かに「急がないのは力なのだ」とか開き直って、いつまでものんべんだらりと逃げ回っていれば、肝心な時は通り過ぎて行ってしまうでしょう。ですが、「時機は必ずくる、焦るな」と、肝を据えることも大事ではないでしょうか。オロオロ、アセアセしてしまうと、何も考えることができないままに、ただ単に無駄な時間を過ごすことになってしまいます。一旦は、自分の時間なのだから自分で時間を預かって、その間じっくりと段取りを考えてみてはいかがでしょうか。結局は、何も新しい考えが浮かばないかもしれませんが、それで良いのです。急がない力とは、自分の時間を他人のためではなく自分のために使うこと、なのですから。

本当の時機とはいつか

では、時機が来るから待てと言われても、その時機とはいつのことなのでしょうか。ボヤボヤしていて遅きに失したりしないのか。確かに後になってみれば、あの時もう少し早く動いておけば良かった、ということは多々起こります。それはそうだと思います。残念ながら、業務はゲームや歴史ではないので、遡って検証することや、やり直すことはできません。ですから、本当の意味の正解はないのかもしれません。試験ではありませんから、絶対的な答えはない、と割り切るしかないのです。

急ぐばかりが能ではない

そんな中、私たちはただやみくもに走り回らず、一旦立ち止まって考え、そして止まらずにまた歩み出す、ということを自ら心掛けるしかありません。そこには、個人差があるでしょうが、決して急ぐばかりが能ではない、急がないという力もあることを理解しましょう。世の中は、ウサギのほかにカメもいることを。