今回は「言われたことしかやらない人」について考えたいと思います。
組織には言われたことしかやらない人がたまにいらっしゃいますが、決してそういう人が全て組織のお荷物ではなく、やる気のスイッチが入っていないだけかもしれません。温かくスイッチを入れてあげればよいのではないでしょうか。
組織の中で人は費用なのか価値なのか
よく、言われたことしかやらない人が若手に多いように言われますが、年齢を重ねた方にもそう言われる方がいらっしゃって、どうしたものかとご相談を受けたりもします。
我々のサービス業という仕事には「人」しか財産はない、とよく言われます。その「人」とは、果たしてコスト(費用)なのでしょうか、バリュー(価値)なのでしょうか。コストであれば遅かれ何らか削られ、バリューであれば増やされます。一般に、マニュアル通りしか働かないマニュアルワーカーという方はコストであり、逆に、働く内容を自ら考えるナレッジワーカーという方はバリューと見做されます。
現場力とは
俗に言う現場力とは、マニュアルに書いていない行間や裏側を読み取り、いちいち指示を待たず、自ら考え判断し行動することに他なりません。ただ、実は何か変わったことをしている訳ではなく、日常の平凡を突き詰めることで、結果として非凡にしてしまう、それが現場力だと思います。現場力は、サービス業に本来求められる力であり、皆がこの力を磨けば会社のバリューも上がっていきます。
言われたことしかやらない人は単なるコストなのか
さてそれでは、「言われたことしかやらない人」は、会社にとって単なるコストでしかないのでしょうか。実は、この「言われたことしかやらない」というのは、こちら側からのご本人以外の見方で、たぶんこの人は「やりたくないのだろう」という、一方的な断定や思い込みに基づいてはいないでしょうか。
当の本人からすると、「言われたことしかわからず、それ以上のことはできない」、「やりたい気持ちはあるのだけど、どうしていいのかわからない」、また、「言われた以上のことをやるからには、それがきちんとできなくてはならないので、やれない」と、思っているのかもしれません。
そんなのは甘えている?
そんなことを言うと、皆さんからは「社会人なのだから甘やかしてはだめだ」、「自分でもっと考えるべきだ」、「どうせ、もともとやる気のないだけなのだろう」と、様々なお叱りを受けそうです。ただ、厳然たる事実として、やりたくてもやることができない人がいる、という事実を認めて欲しいと思います。
誰もが同じようにできるわけではない
私たちは、決してスーパーマンではないので、努力さえすれば、誰もが必ずできるようになる訳ではありません。「何でも頑張ればできる」というのは幻想であり、「~であるはずだ」とか「~であるべきだ」という一方的な思い込みも大きいのではないでしょうか。皆さん、わが身を振り返れば思い当たるふしがありませんか。
そんな方達も、決して努力することを否定している訳ではなく、また、人間どこかに必ず誰かに認められたいという気持ちを持っており、言われたことをやるだけで心底満足です、という方は少ないのでは、とも思います。
温かい目線でやる気スイッチを押してあげる
ですから、みんなでちょっとだけ暖かい目線を持って、やりたくてもできない人達の「やる気スイッチ」を押してみませんか。「やる気スイッチ」は個人ごとに異なります。それは個々の心の中のドアノブのない扉の内側にあり、無理やりこじ開けようとすれば、簡単に壊れてしまいます。スイッチを押すには丁寧さが大事で、「施す」、「やってあげる」的な上から目線ではできません。多少の失敗を許容しつつ、一緒に寄り添った結果、ポンとスイッチが入った方は、その後はぐんぐんと育ち、いずれは当社の大事な現場力の一員となります。こうした方がポツリポツリと出てくることで、当社は一流のサービス業へ成長していくことでしょう。
個人差を認めよう
仕事の前で万人は平等です。ただ、それをどう捉えて、どうこなすかという各人の考え方により、その後の成長に大きな差が生じます。日々積み上げた結果で得たものが、まさに複眼的なものの見方+事前察知能力=現場力なのです。成長していく過程に生じる様々な失敗を恐れることはありません。私たちも、これまで好意や善意なのだから当たり前と思っていたことが、実は一方的な押し付けになっていなかったかどうか、もう一度じっくり考えてみることも必要なのかもしれません。…